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江戸時代の将棋 1

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1.大橋家の出自

江戸時代の将棋史においては、将棋三家のことをおいては語ることができない。ここでは、従来の研究成果を元に、庶民への将棋の普及に貢献した将棋三家とその普及状況について概説する。

大橋家の出自
 大橋家には初代宗桂の200回忌に11代宗桂が作成した系図が残る。これによると、宇多天皇を祖とする佐々木源氏と称される近江の豪族佐々木の系譜を引くことになっている。しかし、増川宏一『将棋Ⅱ』によると、この系図には様々な矛盾があり、後代に作成された顕彰を趣旨とする系図で、真偽のほどは定かでないとしている。
 客観的に大橋家の系譜を知りうる資料としては、近世初期の能楽資料で、能役者の名前や経歴を記した「四座役者目録」がある。また同じく能楽資料で「石橋勧進能之記」があり、両資料から宗桂の子の宗古は素人(玄人能楽家以外の)能楽者渋谷清庵の孫であり、その弟は常益といって清庵の孫婿という。つまり宗古の父親宗桂も、能楽関係者と推定でき、京都の裕福な町衆であったと思われる。このようなことから、将棋にも容易に親しみ、才能を伸ばし得たと考えられる。