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将棋駒の鑑賞法 2

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1.駒の書体

 駒の字には、さまざまな書体が用いられる。熊澤良尊作・巻菱湖書孔雀杢盛上駒の書体は「巻菱湖」(「まきりょうこ」又は「まきのりょうこ」と読む)とよばれ、幕末の書家であった巻菱湖の書を、大正期に駒用の文字としてアレンジしたものである。勢いのあるこの書体はファンも多く、幾多のプロの対局でも用いられている。


巻菱湖書良尊作孔雀杢盛上駒〔森本孝高蔵〕


 そのほかの書体で頻繁に見かけるものには、水無瀬神宮に伝わる書をモチーフにした「水無瀬」がある。そして、「錦旗」。この駒には複数の種類がある。1つ目は後水尾天皇の筆跡のもので大正時代に豊島龍山が模写制作したもの。2つ目は竹内淇洲の書体で、関根金次郎名人が、この駒を使い勝ち続けたため、「錦旗の駒」と呼ばれるようになったもの。3つ目は奥野一香が豊島作に対抗し作成したものである。奥野一香作錦旗書盛上駒はまさにそのものである。また「清安」などと命名された書体もある。


奥野一香作盛上駒〔本学アミューズメント産業研究所蔵〕



清安書静山作島黄楊杢盛上駒〔本学アミューズメント産業研究所蔵〕


 また、棋士の揮毫した文字を書体に取ったものもある。今回の展示では谷川浩司書、石橋幸緒書、村田智穂書、岩根忍書がそれにあたる。谷川書の駒は谷川浩司九段が日々の研究で使用されているもので、平成18年に奈良国立博物館で開催された特別陳列「やまとの匠」で紹介され、国立博物館で駒が取り上げられた初めてのこととなった。


谷川浩司書良尊作根杢盛上駒〔谷川浩司蔵〕


 もちろん独創的な書体も多くあり、中井広恵女流六段所蔵の駒は中国の画家であり書家である古干による書である。絵画的要素の入った文字は独特なものである。古干は中国の現代派画家として世界的評価の高い人物で、この駒の贈呈式は中国大使館で行われた。


古干書秀峰作根杢盛上駒〔中井広恵蔵〕