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子-富興行の全国分布 2

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富興行の全国分布

 富興行というのは、興行主と興行地が違う場合が多々あります。だから、全国分布といっても2通りの解釈ができるわけです。つまり、興行主の分布と興行地の分布です。全国の富興行を時代別に一覧で把握できるような資料は現在のところ見当たりません。しかし、『富札考』(荒木豊三郎、昭和37年)に「全国富籤興行明細表」が掲載されています。ただし、この表に収められているのは、明治初期の富札の発行記録をもとにしたものと思われますが、必ずしも幕府の許可を得た御免富ばかりではなく頼母子や無尽の類も含まれて居ますので、一つの目安としてこの内容を参照してみます。
 同表は興行主の所在地によって、全国分布を表しています。同表の内容を国別に集計すると次のようになります。(重複して掲載されている谷中感應寺は一つとして数えた。)

 山城国(52)、大和国(13)、河内国(4)、和泉国(3)、摂津国(18)、伊勢国(17)、尾張国(17)、三河国(13)、遠江国(3)、駿河国(4)、伊豆国(2)、甲斐国(2)、相模国(6)、武蔵国(73)、下総国(2)、常陸国(1)、近江国(九)、美濃国(13)、飛騨国(3)、信濃国(12)、上野国(2)、下野国(6)、陸前国(1)、岩代国(1)、羽前国(2)、陸中国(1)、陸奥国(3)、越前国(7)、加賀国(17)、越中国(27)、能登国(1)、越後国(5)、丹波国(6)、丹後国(4)、但馬国(2)、伯耆国(9)、出雲国(7)、石見国(1)、播磨国(3)、美作国(4)、備前国(5)、備中国(8)、備後国(11)、安芸国(2)、周防国(2)、紀伊国(4)、讃岐国(5)、伊予国(32)、肥後国(1)、豊前国(4)、豊後国(4)、不明札(24)

これを地図に落としてみると次のようになります。


全国の富籤興行者数一覧

 これを見ると、興行主としては圧倒的に武蔵国(73)と山城国(52)が多いことがわかります。またそれに次いで伊予国(32)や越中国(27)が多いのに対し、摂津国(18)は意外と少ないことがわかります。
 一方の興行地による分布に関して、『富札考』に収録されている「大阪富興行年表」を見ると、享保16年(1731)から天保5年(1834)の間に48件の興行が許可されています。こういったことから、大阪を見るかぎり、興行地としての色合いが強いと言えます。これに関しては、寛政改革の時に松平定信が江戸・京都・大阪の三ヶ所以外での興行を禁じたこともあって、この3ヶ所での興行が圧倒的に多いという要因もあります。興行収益を上げるためには、繁華な地の利を求めたということでしょう。

大阪富興行年表