寅 上方富興行 2
東寺富仕法書
京都の富の仕法書は、第壱番の富から第百番の富までの金額、印違い、発行枚数、興行場所、興行日、当り数、奉納金壱割之事(金六拾目定)などが書かれています。発行枚数は書いてあっても札一枚の金額は書いていません。しかしながら、高岡町の富札のうらには、籤当り銀の引換日の記載や紛失落札損札が発生すれば、断り届けなければならない規定の記載があります。また、丹波の丹生寺では札料が明記され、世話方の名前まで明記されています。
東寺富仕法書によると、東寺の富突は京都の四條道場の境内で興行することになっています。興行日は2月5月・8月・11月の各22日と決め、松竹梅の3印をもって、1字1万枚宛で都合3万枚の富札を発行しました。札料は明記されていないから不明ですが、宝金の金額は、金3204両2分となりました。3万枚を完売したとして、金1朱では、金1875両の売り上げとなり赤字になります。金3朱で計算すると、金5625両になります。これでは儲けすぎになります。金2朱で計算すれば、金3750両になり、金546両の差益が出ることになります。東寺の富札は、発行枚数から考えると高くつくことになります。
どこの寺社でも共通なのが奉納金です。富に当った人が宝金の1割を負担するのですが、感応寺では、壱の富・弐の富・三の富・中節・突留めまでが1割の奉納となっています。丹波丹生寺では、五両以上の当り金の2割を奉納することになっています。地域により、仕法が異なるのも、それぞれの寺社の事情があると考えられます。東寺では、〈奉納金壱割之事但金六拾目定〉となっていることを見ると、随分“こすい”やり方です。金1分が当っても、その1割を奉納しなければなりません。金1分の当り金の人は、776人います。金1分2朱の人は、336人、合わせて1112人となります。印違の袖や又袖など、当り口数の74パーセントを占めるこういった小額の当りからも、宝金の1割を奉納させようとしています。この仕法書に従って計算してみますと、金1分で銭100文を奉納して、本人の取り分は銭900文、金1分2朱では銭150文を奉納して、本人の取り分は銭1350文になります。さらに金2分では、銭200文を奉納して、金1分3朱と50文が自分の懐に入る勘定になります。
東寺富仕法(吉田昭二氏所蔵)