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寅 上方富興行 14

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三縁山増上寺

三縁山増上寺は、明徳4年(1393)浄土宗第八祖聖聡上人によって開かれました。徳川の歴代の将軍中、6人の墓所がこの寺にあります。「別段新規御免御富」では、江戸の芝にある三縁山増上寺の富札を、「三縁山御富大阪御用所」で販売することになりました。印は干支を使用し、1印6600枚宛、全部で79200枚を発行しましたが、札料は記載されていません。金2朱では金9900両、金750両の差益ではさびしいので、金3朱で販売したとすると、金14850両になり、差益も金5700両と満足できる金額となります。この興行は3377人に当り、賞金額は金9148両1分で、金1000両が当る関西特有の富突です。未4月より毎月興行していますが、12月のみ16日に開催しています。興行は大阪の長町にある毘沙門堂の境内で行われました。そして、〈奉納一割引金六十目定〉の奉納総額は、金228両2分3朱余となります。奉納1割引の文言から、当り金額から1割を控除した残りの金額を渡していたと考えれば、手取額は、金5両の当りなら金2分を引かれ金4両2分になります。金1両の当りに対する手取額は、金1両が銭4000文だから銭400文を引かれた残りが、銭3600文となります。この手取額を金に換算すると、金3分2朱と銭100文になります。金3両なら銭12000文と同じだから、銭1200文を奉納し、手元には銭10800文残ります。これを金に直すと金2両2分3朱と銭50文になります。同じく金2分なら銭2000文と同額で、銭200文を奉納し、金1分3朱ト銭50文が手元に残ることになります。
 これだけの当選者が出るので、事務の関係から興行の翌々日から賞金を渡すことになっていました。
 他の仕法書と変わっている部分があるとすれば、第1、第50、第100の3つの当り札については、同じ印で下一桁の番号(尻字)が合っていると、金2分が当るということです。これが、第1、第50、第100の3つの当り札のそれぞれに659口あると書かれています。


三縁山増上寺富仕法書(吉田昭二氏所蔵)